親指の付け根が痛い!【母指CM関節症】の治療とリハビリ
手をぶつけたりなど怪我をしたわけでもないのに、物をつまんだり握ったりすると親指の付け根が痛くなっていませんか?もしかするとそれは母指CM関節症と呼ばれる病気かもしれません。親指は他の指に比べて使う頻度も多く、痛みがあると生活に支障が出てしまうケースは多いですが、それでも我慢して過ごしていたという方が患者さんの中でも割と多くを占めています。しかし、我慢していても良くなるものではありませんし、もし症状が出てしまった場合にはそれ以上悪化しないように予防や治療が必要となることもあります。
今回は母指CM関節症に早期から対処できるように、どのような病態なのかということから治療やリハビリまでを解説していきますので、参考にしていただければと思います。
病態
40歳以上の女性に多く、男女比は2:3で閉経後の女性に多いとされています。また50~60歳代の手をよく使う、特につまみ動作の多い職業にみられます。加齢や繰り返し動作による疲労などによる変形性関節症で、母指CM関節周囲の疼痛とそれに伴う握力・ピンチ力の減弱などが出現し、母指の機能低下を引き起こします。
解剖
母指の手根中手関節は独立した1個の関節であり、他指の手根中手関節とは全く別に扱われます。母指の手根中手関節は大菱形骨と第1中手骨骨底とによって形成される鞍関節であるため多方向への動きが可能です。①橈側外転、②尺側内転、③掌側外転、④掌側内転、の4つの運動と、これらを総合した分回し運動が可能となっています。
また、母指の運動には、長母指屈筋・長母指伸筋・短母指伸筋・長母指外転筋の他に、短母指外転筋・短母指屈筋・母指対立筋・母指内転筋などの母指球筋が関与しているため、筋力が集中するので、母指の力は他の指に比して大きくなっています。その為、母指CM関節にはつまみや握り動作で力が集中する為、靭帯の緩みや関節軟骨の摩耗が生じややすく、変形性関節症がおこりやすくなっています。
診断
つまみや握り動作での母指基部の痛み、CM関節部の圧痛、母指長軸方向に圧やひねりを加えると痛みが出現するcompression test、torque test陽性に加え、X線像で関節症変形を認めます。
母指CM関節症のEaton分類
重症度分類としてはEaton分類というものがあります。
Stage1:関節形態正常、関節裂隙の軽度開大
Stage2:関節裂隙の軽度狭小化、2mm以下の骨片
Stage3:関節の著明な破壊、2mm以上の骨片
Stage4:Stage3に加えて大菱形第2中手骨間、大菱形舟状骨間、大菱形小菱形間など大菱形骨周辺関節の変形性関節症を伴う
治療
保存療法
消炎鎮痛剤の投与や副腎皮質ホルモンの関節内注入などの薬物治療や、CM関節保護用の装具や弾性包帯を装着するといった装具療法などが初期には選択されます。装具固定の基本は母指CM・MP関節のみを固定し、その他関節はフリーに動かせるようにします。固定肢位は橈側外転位を少なくして掌側外転位を大きくした機能的肢位とし、つまみ動作や書字などが可能にすることが一般的です。市販の装具を着用するだけでも痛みが緩和して生活が楽になることが多いです。
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手術療法
保存療法にて改善が見られない場合や、重症の場合は手術が選択されます。
1)靱帯再建
Stage1が対象となる。関節の形態はよく保たれているが、不安定性が強ければ行ないます。
2)関節固定術(tension band wiring法:TBW法)
Stage2以上に用います。菲薄化した軟骨面、深部の軟骨仮骨を削り取り、K-wireを第1中手骨近位骨幹部から大菱形骨に平行に2本刺入し、軟鋼線で8の字締結とします。tip pinchが可能となるようにやや意図的に母指を回内位としています。
3)関節形成術
Stage2以上に用います。Stage2~3では大菱形骨切除を2/3程度にとどめる場合もありますがStage4では大菱形骨を全摘出します。Eaton法、Thompson法が代表的な手術法となっています。5週間程度のKirschner鋼線による母指掌側外転位CM関節仮固定とthumb spica cast装着が必要です。
リハビリテーション
保存療法の場合、積極的な可動域訓練等は行わずに装具による固定を行います。繰り返し動作による疲労が原因となっていることがあるため、CM関節を極力動かさないように安静にしていただくことで疼痛の軽減を図ることが一般的です。
個人によってプロトコールも多少変化しますので参考程度ですが、靱帯再建や関節固定術を行った場合は、3週程度はMP(母指の第二関節)・CM関節を装具固定し、その間IP(母指の第一関節)の運動を行います。固定除去に合わせてMP関節の運動を開始し、術後8〜10週ごろに装具固定を外すことが一つの目安です。
最後に
もし、このような症状が出ている場合はまずは市販の装具で安静にしてみることをオススメします。それでも症状の緩和が見られない場合はお近くの整形外科を受診していただき、主治医の指示に従って治療方針を検討してください。