骨折はいつ治るの?骨折したら一度は見るべき【骨の役割と治癒過程】
人間の骨について皆さんはどの程度ご存知でしょうか?
骨に外力が加わると、ヒビが入ったり連続性が絶たれてしまうなど【骨折】と呼ばれる状態となります。骨折すると固定や場合によっては手術が必要となり、QOL(生活の質)を大きく下げることもあります。スポーツ、転倒、仕事中など怪我のきっかけは人それぞれですが、人生の中で骨折を経験する方は少なくありません。ましてや私の住む北海道など、雪が降る地域では路面の凍結もあり冬に骨折患者が急増する傾向にあります。骨折とは必ずしも皆さんに関係のない事柄ではなく、むしろ誰にでも起こりうるものなのです。
骨はなくてはならない重要なものですが、身体の中にあって普段は見えないため、あまり意識する機会は少ないでしょう。知らない方が多いかもしれませんが、実は約200個というたくさんの骨が体の中にあります。そしてその骨がどのような働きをしているかまで知っている方はもっと少ないのではないでしょうか。
今回は、【人間の骨の役割とはなんなのか】【骨折してしまった骨はどのようにして治癒していくのか】、この二つについて説明していきます。
Contents
骨の役割
骨の役割は大きく分けて6つあり、それぞれ簡単に説明していきます。
①支持
体全体の枠組みを作り、それによって体内の軟組織を支える役割を果たします。
②保護
内臓を外傷から保護しています。例えば胸郭は心臓や肺を保護していますし、頭蓋骨は脳を保護しています。
③運動の補助
筋肉の多くは骨に結合しているので、筋肉を収縮させることで骨を動かすことができます。
④ミネラルの貯蔵と放出
骨の強さに寄与する数種類のミネラル、特にカルシウムとリンを蓄えています。必要に応じて、骨から血液中にミネラルを放出することで、ミネラルバランスを保ち他の器官へミネラルを供給しています。
⑤血液細胞の産出
赤色骨髄が赤血球・白血球・血小板を作成している。赤色骨髄は胎児の骨に広く存在しますが、成人では骨盤、肋骨、胸骨、椎骨、頭蓋骨、上腕骨や大腿骨の骨端部などの限られた部位に認められます。
⑥トリグリセリドの貯蔵
トリグリセリドは重要な化学エネルギー源になりますが、それは黄色骨髄の脂肪細胞に貯蔵されています。年齢が進むにつれて赤色骨髄から黄色骨髄へと変化していきます。
骨折の治癒過程
(1)炎症期(2)修復期(3)リモデリング期の3期に分類されます。
(1)炎症期
血液が流出して骨折部を中心に骨折血腫が形成され、好中球やマクロファージ、貪食細胞などの炎症性細胞が侵入していきます。破骨細胞を含むこれらの細胞は、血腫など壊死組織を吸収して修復期に向けて進んでいきます。この過程は受傷後から1~2週間続きます。
(2)修復期
骨折部の血腫に新しい毛細血管や軟骨芽細胞が侵入し、仮骨となる基質(前仮骨)が沈着します。その基質に骨原性細胞が侵入し、線維組織と少量の骨が混じった軟骨からなるやわらかい仮骨が形成されます。骨芽細胞によって石灰化が生じ、線維骨からなる硬い仮骨(繊維軟骨性仮骨)に変換されていく過程がおよそ数ヶ月続きます。
(3)リモデリング期
骨折修復過程の最後には、仮骨のリモデリングが起きます。未熟な基質化されていない線維骨を成熟させ、骨芽細胞と破骨細胞の作用により形成された骨は次第に骨梁の吸収と新生が繰り返されていきます。受傷後数か月間から数年継続し、本来の局所の力学に応じて皮質骨と海綿骨の構造を整えていきます。
骨折の治癒期間
①骨折部位とその粉砕程度 ②骨折周辺軟部組織の損傷状態 ③感染の有無 ④骨折部などの初期治療内容 ⑤物理的ストレス状態 ⑥循環状態(骨折部の栄養体)⑦年齢 ⑧性別 ⑨内分泌疾患(甲状腺機能低下症)などの有無
これだけ骨癒合に影響する因子があるため一概に治癒期間を決定することはできません。参考として、一般的に骨折の多い手の骨折では、ある程度の運動の負荷に耐えられるようになるまでに【前腕骨(橈骨・尺骨):4〜6週】、【手根骨:8週】、【中手骨:6〜8週】、【指節骨:4〜6週】が大まかな目安となっています。
骨折を早く治すために
従来、骨折をすれば固定や手術をしますが、あとは自然修復するまで待たなければなりませんでした。しかし最近では超音波が骨癒合を促進することが知られており、超音波骨折治療法というものが普及されつつあります。使用するためには病院から治療器をレンタルする必要がありますので、もし興味がある方は、医療機関に相談されても良いかもしれません。後日、記事として詳細をまとめたいと思います。
また、骨折では有名な橈骨遠位端骨折についてのリハビリテーションをまとめた記事もありますので、参考にしていただければと思います。