一時的な麻痺・痺れ!その症状【一過性脳虚血発作「TIA」】かも?
片方の手足が動かない(片麻痺)・痺れる・言葉が出にくい(失語)などの症状が突然出現し、短時間(15分程度が多い)で改善する疾患を『一過性脳虚血発作(TIA)』と言います。
局所の脳、脊髄、網膜の虚血などによって引き起こされる一過性の神経障害であり、脳梗塞の危険因子であるため、速やかに対処する必要があります。
今回は、一過性脳虚血発作の病態や症状、脳梗塞発症率、検査・治療などについて簡単にまとめていきます。
【病態】
一過性脳虚血発作の原因は①非心原性と②心原性の2つの大別されます。
①非心原性
頭蓋内主幹動脈、あるいは内頸動脈起始部や大動脈弓などの頭蓋外主幹動脈に形成されたアテローム硬化性病変が剥離し、末梢の血管を一時的に閉塞することにより発症します。原因としては最も頻度が高いとされています。
②心原性
心臓内に血栓が形成されるような病態があればすべて原因となりえ,心房細動,弁膜症,卵 円孔開存,急性心筋梗塞,心筋症,感染性心内膜炎など疾患は多岐にわたります。その中でも非弁膜症性心房細動は脳梗塞(心原性脳塞栓症)の確立した危険因子であり、心原性の原因として最も頻度が高いとされています。
【症状】
閉塞する脳動脈の位置によって変化しますが、大きく分けると①運動障害、②感覚障害、③言語障害などが生じます。
①運動障害
一側の顔面や上下肢の脱力、麻痺、手指の巧緻性低下(指がうまく動かせない)
②感覚障害
一側の上下肢の痺れや感覚鈍麻
③言語障害
言葉がうまく話せない(失語)、呂律が回らない(構音障害)
【脳梗塞発症率】
一過性脳虚血発作後、90日以内に脳梗塞を発症する頻度は10〜20%と言われており、そのうちの約半数は2日以内に発症すると言われています。
しかし、早期に治療を行うことで予後が改善すると報告されています。そのため一過性脳虚血発作が疑われたら早めに診察を受けて、検査・治療を受けることで脳梗塞の発症を予防して行くことが大切です。
【検査・治療】
血液検査、心電図、MRI、MRA、頸動脈エコーなどを用いて、一過性脳虚血発作を引き起こした原疾患を探っていきます。
その検査結果から非心原性の場合は抗血小板療法(アスピリン等)、心原性の場合は抗凝固療法(ヘパリン等)といった薬物治療が選択されていきますが、高度の頸動脈狭窄症があった場合は外科的治療(CEA・CAS)が行われることがあります
CEA:頸動脈内膜剥離術
症候性頚動脈狭窄症では頸動脈の狭窄率が50%以上の場合、薬などの内科的治療に加えて外科的治療を行う。また無症候性であっても狭窄率60%以上であれば外科的治療を行う方が予防に有効とされています。
全身麻酔下にてアテローム変化にて肥厚した頸動脈内膜を剥離して切除し狭窄を改善させます。
CAS:頸動脈ステント留置術
高度の頸動脈狭窄はあるが、心臓疾患や重篤な呼吸器疾患があったりすることでCEAを行うことが困難な場合、CASが有効とされています。
大腿部よりカテーテルを挿入し、狭窄部でバルーンを広げます。拡張させた血管の状態を保つために広げた部分にステントを留置し、その後カテーテルを引き抜きます。
*合併症:CEA、CAS共通の合併症として、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などがある*
【まとめ】
一過性脳虚血発作の症状は一時的であり、そのため発症しても軽視されてしまうことが多くあります。しかし、脳梗塞の危険因子であり速やかな対応が重要とされています。
発症が疑われた場合は、症状が改善していても一度病院で診察していただくことをお勧めします。
検査や場合によっては早期の治療を行うことが健康な日々を送るために必要なことだと思います。